ついこの前まで高級ワイヤレスイヤホンの代名詞的な機能だった「ノイズキャンセリング」(ANC)。昨今ではアンダー1万円のワイヤレスイヤホンでも対応する製品が増えてきた。
ただ、その多くはコスパ特化の中華イヤホンであり、なかなかオーディオというには程遠かったりする。
そうした中で登場したのが国産大手オーディオメーカー、JVCケンウッドが手がける「JVC HA-A50T」。市場価格9,000円ながらノイズキャンセリングに対応。国産モデルとありオーディオ面でも注目を集めている。
実際どの程度のノイズキャンセリング性能なのか気になったので筆者も購入してみた。以下レビューしていきたい。
JVCケンウッド「JVC HA-A50T」製品評価
発売時期 | 2020年10月 |
市場価格 | 9,000円前後 |
JVCケンウッド「JVC HA-A50T」の製品評価は以下のとおり。
低音 | (4) |
中音 | (3.5) |
高音 | (4) |
イヤホンの装着感 | (3.5) |
ノイズキャンセリング | (4) |
外音取り込み機能 | (5) |
マイク性能 | (3) |
バッテリー性能 | (3) |
ここがGood!!
- ノイズキャンセリング(ANC)は実用水準の性能
- 「外音取り込み」は異様に高性能、骨伝導イヤホン代わりにもなる
- 音質はしっかりとした低音&抜けのよい高音を絡ませた爽快サウンド
- 安定したワイヤレス接続品質、屋外での利用も問題なし
ここがBad...
- イヤホンサイズが少し大きめ、装着すると横に出っ張る(小型ヘッドセットのようなイメージ)
- 複数デバイス間のペアリング切り替えが面倒くさい
- タッチ操作コマンドの割り当て変更できず
製品カラーリングは3色
カラーリングはブルー、ブラック、トープの3色。レビューはブルーで行う。
この記事の目次(タッチで移動)
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JVCケンウッド「JVC HA-A50T」の製品概要
スペックシート抜粋
Bluetoothバージョン | 5.0 |
Bluetooth対応コーデック | SBC、AAC |
ノイズキャンセリング | 対応 |
外音取り込み機能 | 対応 |
マルチポイント | × |
防水性能 | IPX4 |
バッテリー駆動時間 | イヤホン単体8時間 |
ケース併用で最大24時間 | |
ケース充電方法 | USB Type-C(有線)のみ |
専用アプリ | × |
付属品

低反発イヤーピース付属(写真左)
製品本体ほか、充電ケーブル(USB Type-C to A)、イヤーピース(2種類)が付属。
イヤーピースは通常イヤーピース(ゴム)と低反発イヤーピースの2種類あり。初期装備は低反発イヤーピース。
低反発イヤーピースだと通常のイヤーピースよりも遮音性を高められるのでノイズキャンセリングとの相性よい。消耗をケチらず活用したいところ。
JVCケンウッド「JVC HA-A50T」のペアリング仕様
ペアリング仕様抜粋
Google Fast Pair | × |
マルチポイント | × |
マルチペアリング | 対応(最大?台) |
Bluetooth設定画面からのワンタップでのペアリング切り替え | ×(先に現在のペアリングを解除する必要あり) |
新規ペアリングモードの起動方法 | 既存ペアリングデバイスのBluetoothをオフにして、ペアリング再接続できない状態にして少し待つ |
Google Fast Pair とは?
Google Fast Pairは、Googleが提供するペアリング簡素化システム。
Android OS 6.0以上のスマホであれば、専用のポップアップ画面からワンタッチでペアリング設定できる。
マルチポイントとは?
マルチポイントとは、複数デバイスを同時接続できる機能のこと。
なにかしらオーディオ再生しているデバイスに自動で音声出力元が切り替わる。
マルチペアリングとは?
マルチペアリングとは、複数デバイスのペアリング情報が記録できる機能のこと。
1度記録してしまえば次回以降に再度セットアップする必要がなくなり、ケースふたを開くだけでデバイスと再接続できる。
昨今のワイヤレスイヤホンだとおおよそ5台〜10台のデバイスのペアリング情報が記録できる。
Bluetooth設定画面からのワンタップでのペアリング切り替えとは?
複数デバイス間でペアリングを切り替える場合、先に現在のペアリングを解除する必要がある。
一部のワイヤレスイヤホンであれば現在のペアリングを解除せず、切り替えたいデバイスのBluetooth設定画面でイヤホン名を選択するだけでペアリングを上書きして移せる。
新規ペアリングモードの起動方法について
初回設定時はケースふたを開くだけで自動で新規ペアリングモードが起動する。
2回目(2台目)以降のペアリングを行う場合は新規ペアリングモードを手動で起動する必要がある。
新規ペアリングモードの起動方法
新規ペアリングモードを起動するための操作コマンドやボタンなし。
ケースふたを開いた状態にして、ペアリング再接続できないまま数秒経つと自動で新規ペアリングモードが起動する。
すでに何かしらのデバイスでペアリング設定している場合だとペアリング再接続してしまうため、先にペアリングしたデバイスのBluetoothをオフにしておく必要がある。
複数デバイス間のペアリング切り替え方法
複数デバイス間でペアリングを切り替える場合、先に現在のペアリングを解除する必要あり。
現在のペアリングデバイスのBluetoothをオフにしてペアリング解除。その状態でペアリングを移したいデバイスのBluetooth設定画面からイヤホン名をタップすればペアリングが切り替えられる。
JVCケンウッド「JVC HA-A50T」の機能レビュー
バッテリーまわりのこと
バッテリー駆動時間 | イヤホン単体6時間 |
ケース併用で最大28時間 | |
ケース充電方法 | USB Type-C(有線)のみ |
バッテリー駆動時間は相場同等だが、ノイズキャンセリング常時ONだと通常よりも短くなる。
充電はUSB Type-Cケーブルで可能。Androidスマホユーザーなら充電ケーブルが使いまわせる。
ワイヤレス充電(Qi充電)には非対応。
通話マイク仕様
通話時ノイズカット機能 | × |
風切り音カット | × |
マイク性能はごくごく普通。
マイクの集音性能は問題なし。ただ、ノイズカット機能を搭載しておらず、周囲の音も含めて集音している。基本的には自宅や屋内など静かな場所で使うべきだろう。
ボタン操作
ボタン種類 | タッチセンサー |
操作コマンドの割り当て変更 | × |
イヤホン本体にタッチセンサー内蔵。オーディオ操作、通話操作、音声アシスタント起動などひととおり可能。
操作コマンドの割り当てはいびつで初見殺し。専用アプリが提供されず操作コマンドの割り当て変更もできない。
スマホ操作コマンド(割り当て変更不可)
左イヤホン操作 | 右イヤホン操作 | |
1回タッチ | オーディオの再生/停止 | 「ノイズキャンセリング→外音取り込み→OFF」の切り替え |
2回タッチ | 音量を下げる | 音量を上げる |
3回タッチ | 音声アシスタント起動 | - |
1秒触れて離す | 前の曲へ戻る | 次の曲へ進む |
着信対応は左右どちらかを1回タッチ。着信終了も1回タッチ。着信拒否は着信中に1秒触れて離す。
「1秒触れて離す」とは、気持ち1秒長押しして、”プッ”みたいな音がしたらタッチパッドから指を離すと起動する操作コマンドのこと。
通話対応コマンド(割り当て変更不可)
左イヤホン | 右イヤホン | |
1回タッチ | 着信対応 | |
着信終了 | ||
1秒触れて離す | 着信拒否 |
イヤホン着脱検出(装着検出)
イヤホンの着脱検出(装着検出) | × |
イヤホンの着脱検出(装着検出)には対応せず。
対応モデルだとオーディオ再生中にイヤホンを耳から外すとオーディオ再生が自動停止。イヤホンを耳に装着し直すとオーディオ再生が自動開始する。
防水性能
防水性能 | IPX4(IP4) |
防塵性能 | × |
防水性能はIPX4と相場相当。雨や汗が防げる。スポーツ中の利用も問題ない。シャワーをかけたり浸水させるのはNG。
低遅延モード
低遅延モード | なし |
遅延性能 | ー |
ゲーム以外での利用 | ー |
低遅延モード(ゲームモード)の提供なし。
専用アプリ
専用アプリ | なし |
イコライザー調整 | ー |
タッチ操作コマンドの割り当て変更 | ー |
低遅延モード(ゲームモード)ON/OFF | ー |
イヤホンを探す | ー |
専用アプリの提供なし。
iPhoneとの相性
iPhoneとの相性 | (非常によい) |
AACコーデック | 対応 |
iOS向け専用アプリ | ー |
iPhoneとの相性は非常によい。Androidスマホで使う場合と比べてマイナス点らしいマイナス点なし。
iPhoneで主流のBluetoothオーディオコーデックである「AAC」に対応しているため、オーディオ再生や音質面での問題はみられず。
専用アプリはiOS、Android関係なく提供なし。Androidスマホと比べて条件イーブンだ。
JVCケンウッド「JVC HA-A50T」の外観&使用感チェック
イヤホンサイズはわりと大きめ、装着すると横に出っ張る
イヤホンサイズは大きめ。横に出っ張ったデザインとあり、さながら小型ヘッドセットを装着しているような錯覚を覚える。
イヤーピースのサイズさえ合えばつけ心地は悪くない。装着感も安定していてイヤホンの揺れやズレは感じにくい。
小型ヘッドセットのようなビジュアルだけが賛否分かれそうだ。マスク着脱時にマスク紐が引っかからないよう気をつけたい。
充電ケースはデカイ

縦4cm、横8cm

厚さ3.5cm
充電ケースサイズは縦4cm、横8cm、厚み3.5cm。他社製品よりも気持ち1割ほど大きめ。
なんというか横長すぎて、ファーストインプレッションで「長っ!!」と思ってしまった。
男性であればズボンのポケットに入れておけるサイズ感だが、わりとモッコリするので邪魔に感じそう。
JVCケンウッド「JVC HA-A50T」の音質チェック
音質はフラットかつクリアで聞き心地よい
音質はフラットかつクリア。低音がしっかり響きつつも中音域〜高音域はクリア。音の力強さが多分に感じられる王道のオーディオ感ある。
10mmの大型ドライバーを搭載しているが、いたずらに低音重視というわけではなく、音がこもる感じもない。
アンダー1万円のワイヤレスイヤホンだと低音増強しただけの安っぽい製品、いかにもなドンシャリくさい製品が多いが、そうした製品とは明確に一線を画す。オーディオ重視のワイヤレスイヤホンと言ってしまって問題ない完成度が見て取れる。
イコライザー調整(音質カスタム)には対応していないが、デフォルトままでも十分に満足できる音質だ。
【重点レビュー】ノイズキャンセリング&外音取り込み機能の性能は?
ノイズキャンセリング(ANC)はU1万円では最優秀クラス
JVCケンウッド「JVC HA-A50T」は、国産のアンダー1万円モデルでは珍しくノイズキャンセリング(ANC)を搭載。機能ONにすると周囲の音が低減できる。
2万円〜3万円する高価格モデルのように周囲の音を大幅に、機械的にシャットアウトするわけではないが、うるさい音がきちんと低減できててノイズキャンセリングらしい静寂が味わえる。
もっぱら低減するのは低周波音(生活音やダクト音など濁音ノイズ)。人の話し声など高周波音は残り気味だが、オーディオ再生していれば気にならないレベルに持っていける。
物理的な遮音性を高めるウレタン製のイヤーピースも効果あり。防音室のロジックでノイズキャンセリングの効果を補強している。
アンダー1万円でノイズキャンセリングを試してみたい人がいたら JVC HA-A50T をまず真っ先におすすめしたい。
ノイズキャンセリング利用時のホワイトノイズあり
ノイズキャンセリング利用時に”サーっ"といった機械音(通称ホワイトノイズ)が発生している。
オーディオ再生している状態であれば気にならない微弱な音だが、オーディオ再生を止めると認知できてしまう。
もっぱらノイズキャンセリングを耳栓代わりに使いたい人、オーディオ再生を止めてノイズキャンセリングだけで活用したい人だとホワイトノイズを鬱陶しく感じるかもしれない。
「外音取り込み」は異様に高性能、骨伝導イヤホンのような活用も可能

外側マイクから音取り込み
JVCケンウッド「JVC HA-A50T」の隠れたセールスポイントこと外音取り込み。
イヤホンマイクを通じて周囲の音を取り込み。イヤホンを装着したままイヤホン・スピーカーを通じて周囲の音が聞き取れる機能だ。
U1万円ワイヤレスイヤホンだとオマケ感が多分にある同機能だが、JVC HA-A50T は異様なまでに高性能。周囲の音を9割方そのまま通しているような、”明瞭”という言葉がふさわしい自然な外音取り込みを実現している。
また、機能ONにするとオーディオ音量が自動で最小に調整される。イヤホンを装着したまま会話したいときなど機能ONにしてそのまま会話が始められる。
ガチの骨伝導イヤホンに比べると遮音性こそ残るものの、歩行中、運動中くらいであれば常時機能ONにして骨伝導イヤホン代わりに運用するのもいいかもしれない。
外音取り込み機能は、右イヤホンのタッチセンサーを1回タッチで機能ON/OFFできる。
JVCケンウッド「JVC HA-A50T」の気になったところ(あるいはデメリット)
複数デバイス間のペアリング切り替えが面倒くさい
スマホやPCなど複数デバイス間でペアリングを切り替える場合、先に現在のペアリングを解除する必要あり。
現在のペアリングデバイスのBluetoothを一度オフにしてペアリングを解除。そのうえでペアリングを切り替えたいデバイスのBluetooth設定画面からイヤホン名をタップするとペアリングが切り替わる。
大手メーカーのワイヤレスイヤホンだと現在のペアリングを解除せず、上書きする形でペアリングが切り替えられるが、同仕様には対応せず。
スマホやPCなど複数デバイス間でワイヤレスイヤホンを使いまわしたい人だと面倒に感じそうだ。
この記事のまとめ
ここまでJVCケンウッド「JVC HA-A50T」をレビューしてきた。
アンダー1万円のワイヤレスイヤホンでよくある製品評、「価格にしては...」を軽く2〜3段階ほど上回ってくる優秀な製品で驚いた。
ノイズキャンセリング性能はもちろん、オーディオ品質だったり、異様に高性能な外音取り込み機能だったり総合的に評価できる製品に仕上がっている。
イヤホンサイズが少し大きかったり(横に出っ張ってる)、タッチ操作コマンドがいびつだったりとマイナス点も見られるが、いずれも製品評価を覆すほどの致命的な問題ではない。
ワイヤレスイヤホンとしての基礎ポテンシャルは高いし、これが価格9,000円で購入できるのであれば間違いなく優良品。JVCケンウッドのブランド製品という点もプラスアルファの評価ポイントだ。
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