2019年に発売されたソニーのワイヤレスイヤホン「WF-1000X M3」。AirPods Proと並び高い人気、知名度を誇り、2020年なおワイヤレスイヤホンの販売ランキング上位常連に名を連ねている。
ノイズキャンセリング&オーディオ性能に圧倒的な強みを持ち、特にオーディオはハイレゾ相当の高音質再生を可能にするDSEE HX技術(機能)に対応。とかくオーディオにこだわりたい人から支持を集めている。
同じくノイズキャンセリングに対応したAirPods Proとなにかと比較されがちだが、オーディオ製品として見ればソニー「WF-1000X M3」の方が間違いなくパフォーマンスは良い。以下レビューしていくので、特にAirPods Proとどちらを買うべきか迷っている人は参考にされたい。
レビュー対象製品
ソニー「WF-1000X M3」レビュー
製品概要
ソニー「WF-1000X M3」は、2019年7月に発売開始されたソニーのワイヤレスイヤホン(完全ワイヤレスイヤホン)。市場価格は24,000円前後。
2017年に発売された初代モデル「WF-1000X」の後継機に該当する。WF-1000Xの弱点として挙げられた音飛びや接続切れといったワイヤレス接続の安定感が改善され、普通に使えるワイヤレスイヤホンとして堅実に進歩した。その上で代名詞たるノイズキャンセリングやハイレゾ相当のオーディオなど強化され、総合力で完成度を高めた。
2020年なお価格.comや家電量販店のワイヤレスイヤホンランキングでは上位常連であり、名実ともにAirPods Proと並ぶ今日のワイヤレスイヤホン業界の人気商品と言えよう。
ケースデザイン

写真縦5cm、横8cm

厚さ2.8cmほど
ケースは他社製品に比べて大きめ。AirPods Proケースの気持ち1.5倍くらいの大きさだ。男性ズボンの小ポケットには入らない。

AirPods Proは驚きのコンパクトサイズだった。
ケースサイズの割にバッテリー容量は普通。ノイズキャンセリングONの状態で公称24時間とあくまで業界一般的な水準だ。なぜここまでケースが大きくなったのか不思議でしょうがない。
つけ心地

耳に付けたイメージ
イヤホンは片耳8gとワイヤレスイヤホンにしては少し重め。いざ耳に付けるとそこまで重さは感じないのだが、耳に付けてる感、引っ付いてる感は多分にある。さながら小型ヘッドセットのような付け心地だ。

イヤーピースの替え付属
性能レビュー
ソニー「WF1000X M3」の総合評価
※スペック評価はSが最高、Cが最低
評価 | コメント | |
ノイズキャンセリング性能 | S | 上の上クオリティだが、風切り音あり |
外音取り込み機能 | A | 多少ホワイトノイズあるも実用は可能 |
オーディオ性能(音質) | S | ワイヤレスイヤホンとは思えぬ高音質 |
接続安定性 | B | 前作よりも改善されたが不安残る部分も |
ペアリング勝手 | S | 複数デバイス間でペアリング切り替え可能 |
バッテリー持ち | S | ケース併用32時間とスタミナモデルに |
充電環境 | A | USB Type-C充電に対応、ワイヤレス充電は非対応 |
マイク性能 | C | 騒音のある場所だとほぼ使えない |
タッチ操作性 | B | タッチ処理に不安あり |
防水 | – | 防水非対応 |
以下詳しく見ていく。
ノイズキャンセリング性能【評価S】
ソニー「WF-1000X M3」の代名詞たるノイズキャンセリング。ほぼほぼ屋外の騒音など除去できており、ノイズキャンセリングならではの静寂が味わえる。ホワイトノイズ(サーっと言った音)も発生しておらず、ノイズキャンセリングイヤホンとして間違いなく”上の上”と言えるクオリティだ。
ただ、結構な風切り音が発生している。もっぱら屋外で使っているとイヤホン外側に当たった風の音が”ヴォーヴォー”と聞こえるので、せっかくのノイズキャンセリングの静寂が台無しだったりする。
アンビエントサウンド(外音取り込み)にすれば「風ノイズ低減」モードがあるので、これを使えば、風切り音を除去できるのだが、結局ノイズキャンセリングは解除されてしまう。なので、ノイズキャンセリング利用時の風切り音はどうしても除去できない。こればかりは残念なところだ。

「風ノイズ低減」モードにすれば風切り音は除去できるが、ノイズキャンセリングが解除されてしまう。
外音取り込み機能【評価A】
外音取り込み機能あり(ソニーいわく”アンビエントサウンド”)。補聴器のような機能で、ノイズキャンセリング用マイクを使って周囲の音を集音、それをイヤホン・スピーカーを通して聞くことができる。
集音の大きさを1〜20まで調整でき、数字が大きくなるにつれてホワイトノイズ(サーっと言った雑音)が大きくなるが、その分、集音できる音の範囲も広がる。ぶっちゃけ会話で使うには微妙だが、駅のホームアナウンスなどは結構聞き取りやすいので、シチュエーション次第では化ける機能だと思う。
オーディオ性能(音質)【評価S】
オーディオ性能はソニー「WF-1000X M3」の魅力の一つだ。重低音の聞いたサウンドながら、ボーカルの音も伸びやか。細かな音もきちんと拾っており、非常に音の幅が広い。完全ワイヤレスイヤホンでも、ここまでのオーディオ表現が可能なのかと時代の進歩を感じる出来だ。
専用アプリ「Headphones Connect」を使えばイコライザー調整(音質調整)も可能。いくつかいじってみたが、特に「Vocal」モードがすごかった。ボーカル音声が大きくなるが、かといってバックサウンドが小さくなるわけではなく、きちんとボーカルに追いついてくる。一聞すると音量を上げすぎたかと勘違いするレベルだが、音量は変わっておらず、音漏れしてるわけでもない。ハードとしてのオーディオスペックを存分に味わえる。

イコライザーはマニュアル設定も可能
ハイレゾ音源には非対応だが、ハイレゾ補正「DSEE HX」は対応
「ハイレゾ相当の高音質」が謳われる同製品だが、ハイレゾ音源に対応しているわけではない。あくまでDSEE HX補正によるハイレゾ相当の音質が限度である。
DSEE HXとは、オーディオ音源を補正してハイレゾ音源に近づけるソニー独自技術。ソニー「WF-1000X M3」ももれなくDESS HX対応製品であり、実際にDESS HXにして聞いてみると、通常よりも音がクリアで、音の重厚感が気持ち2割くらい増す。音の解像度が劇的に変わるので、ハイレゾないにしろハイレゾ相当の高音質が嘘ではないと分かる。
なお、DSEE HXはイコライザーOFFの状態でないと起動しない。また、DESS HXは通常再生よりもバッテリー消費が激しく、ノイズキャンセリングと組み合わせた状態だと通常6時間のイヤホン内蔵バッテリーが最大3時間になるとしているので、調子に乗って使いすぎるとバッテリー持ちが辛そうだ。

DSEE HXを使うには、イコライザーをOFFに、DSEE HXをAutoにする必要あり。
接続安定性【評価B】
接続安定性は悪くはないが、時折音が飛んだような”ポツン”という音が鳴る。また、左右分離型イヤホンとあり、左右それぞれがスマホと接続されるが、そのせいか片耳だけ聞こえなくなることもある。いずれも多発するわけではなく、時々起こりうる話なのだが、AirPods Proのような100%に近いストレスフリーな使い勝手とは言い難い。気持ち75点/100点くらいの出来だろうか。
とはいえ、2017年に発売され、接続安定性が酷評された前作「WF-1000X」のよりも飛躍的に改善しているし、この改善あったからこそ1年以上にもわたるヒット商品になった点は理解し評価すべきだ。
ペアリング勝手【評価S】
AirPodsやGalaxy Budsシリーズのようにワンタッチで複数デバイス間のペアリング切り替えが可能。普段からスマホ、タブレット、PCなど複数デバイス間で同じワイヤレスイヤホンを使いまわしている人にうってつけだ。
新規ペアリング
イヤホン左右のタッチセンサーを同時に7秒長押しで新規ペアリングモードが起動する。マルチペアリング対応なので、2台目以降のデバイスとも同様手順でペアリングできる。なお、Androidスマホ(Androidデバイス)に限ればケースにNFCタッチすれば新規ペアリングできる。
再接続
ケース蓋を開くだけで最後にペアリングしていたデバイスと自動でペアリングされる。
ペアリング切り替え
ペアリング済みデバイス間でペアリングを切り替える場合、Bluetooth設定画面から手動で繋ぎ直す。AndroidスマホであればケースのNFCタッチでも切り替え可能。また、専用アプリを使っても切り替えられる。

専用アプリ使ったペアリング切り替え可能
「再接続」成立時のペアリング切り替え
何かしらのデバイスとの再接続されている状態でも上書きでペアリング切り替えできる。
バッテリー持ち【評価S】
バッテリー持ちはノイズキャンセリングONだとケース併用で公称24時間、ノイズキャンセリングOFFだとケース併用で公称32時間としている。業界一般的な、それこそAirPods Pro同等クラスのバッテリー持ちなので、そこまで粗らしい粗はない。ただ、先述とおり、ケースの大きさの割に普通のバッテリー容量だ。
充電環境【評価A】
USB Type-C端子で充電可能。Qi充電(ワイヤレス充電)には対応せず。短時間充電機能あり、10分の充電で90分相当のバッテリーが充電できるので、忙しいときでもパパっとバッテリー残量が確保できる。
タッチ操作性【評価B】
イヤホン外側にタッチセンサーを搭載しているが、思いのほか反応が悪い。ワンタップまだしも、ツータップ、ツリータップだと高確率で反応せず、ワンタップとして処理されてしまうのでストレスに感じる。この点、割り切りが必要だと思う。
タッチ操作コマンドについて
タッチ操作コマンドは専用アプリ(Headphones Connect)から割り当て可能。イヤホン左右に同一、あるいは異なるコントロールを設定できる。コントロールは「再生コントロール」「外音コントロール」「音量コントロール」ほか、Googleアシスタントやアレクサ操作も選べる。
再生コントロール
1回タップ | オーディオ再生/停止 |
2回タップ | 曲送り |
3回タップ | 曲戻し |
長押し | 音声アシスタント起動 |
外音コントロール
1回タップ | ノイズキャンセリングON → 外音取り込み機能ON → OFF →(以下繰り返し)※1 |
長押し | クイックアテンション起動※2 |
※1 1回タップするごとに「→」の順番で機能切り替え
※2 長押ししている間だけ外音取り込み機能をONに

左イヤホン、右イヤホンにそれぞれ1つづつ設定できる。
設定した割り当て内容はイヤホン本体に記録されるので、他のデバイスを跨いでも同じ操作が可能。とはいえ、Googleアシスタントやアレクサは専用アプリをインストールする必要があるのでPCなど一部環境では機能しない。
マイク性能【評価C】

イヤホン外側中央にある丸い部分が通話用マイク
イヤホンマイクを内蔵しているが、あまりクオリティは良くない。屋内まだしも、屋外だと騒音や風の音など雑音が多分に入る。ノイズキャンセリング用の集音マイク(外側マイク)がそのまま通話用マイクになっているせいか、通話時の雑音除去などほとんど期待できない。
昨今では安物ワイヤレスイヤホンですら、通話用マイクと通話時の雑音除去マイクを別々に設けるのが一般的になっていることもあり、妙なところをケチったなとの感想を持った。
防水非対応
高価格帯モデルでは珍しく防水非対応。雨の日に使ったり、ジムやジョギングなど汗だくの状態で使うには不安が残る。
専用アプリ「Headphones Connect」について
iOS、Android双方に専用アプリ「Headphones Connect」を配信している。同アプリを使えば、イコライザー調整(音質調整)、タッチセンサーの機能割り当て変更、通知アナウンスの言語設定などが可能だ。
また、Android版アプリならアプリ起動でペアリングを自動で繋げる。普段から複数デバイス間でワイヤレスイヤホンを使い回している人ならアプリを入れておくと便利だろう。
この記事のまとめ
ソニー「WF-1000X M3」をレビューした。
ノイズキャンセリング利用時の風切り音、タッチセンサーやイヤホンマイクの品質、防水非対応など諸所欠点はあるが、いずれも自宅で使えば問題ない。デメリットがあまりに首尾一貫しているため、もしかしたら最初から自宅で使うためのワイヤレス・オーディオとして開発したのかもしれないとの印象を受けた。
実際にオーディオ性能を中心としてクオリティはよい。オーディオ性能に特化したワイヤレスイヤホンの中でも、ここまで音の厚みとクリアさを兼ね備えたモデルは数少ない。とかくオーディオを重視し、音楽を聞くためのワイヤレスイヤホンを探している人であれば気に入るだろう。
レビュー対象製品
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