今日のワイヤレスイヤホン業界で人気を二分するApple「AirPods Pro」とソニー「WF-1000X M3」を比較レビュー。
どちらもノイズキャンセリングに対応したワイヤレスイヤホンであり、カフェや電車の中で使えば一人静寂な世界に浸れる。以下ではノイズキャンセリング性能はじめ、オーディオ性能、バッテリー持ち、そのほか細かな使い勝手を見ていく。どちらを購入するか迷っている人は参考にされたい。
製品概要
AirPods Pro
2019年10月に発売開始となったAppleの新作ワイヤレスイヤホン。直販3万円ほど。従来AirPodsとは別シリーズでノイズキャンセリング(アクティブノイズキャンセリング)に対応した上位版モデルに位置付けられる。
ソニー「WF-1000X M3」
2019年7月発売。価格2.4万円ほど。2017年に発売した初代モデル(WF-1000X)から2年ぶりの後継機。初代モデルで弱点として挙げられていた接続安定性、音切れや動画視聴時の音声延滞などが改善された。
ノイズキャンセリング性能やオーディオ性能もよく、ここ数年ではAirPodsと並ぶヒット商品になった。
ワイヤレスイヤホンの重点ポイント5大比較
まずは昨今のワイヤレスイヤホンの重要指標たる以下5点で比較していく。
- ノイズキャンセリング
- 外音取り込み機能
- オーディオ性能
- 接続安定性
- ペアリング勝手
1. ノイズキャンセリング
評価
評価 | コメント | |
AirPods Pro | S | ほぼ業界トップのノイズキャンセリング性能 |
ソニー「WF-1000X M3」 | S- | 業界”上の上”レベルだが、AirPods Proには及ばず |
結論
AirPods Proのノイズキャンセリングは業界随一とも言える完成度の高さ。騒音もちろん、扇風機の風の音やキータッチの音も除去されるので、まさに”無音”というのがふさわしい出来に仕上がっている。
対してソニー「WF-1000X M3」の場合、ノイズキャンセリングのクオリティ自体は高いが、それでもAirPods Proに比べると除去されない音が多い印象を受けた。また、屋外だと風切り音(風のボォーボォー音)が入ってしまうのでノイズキャンセリングの没頭感が損なわれているのもマイナス点として挙げられる。
2. 外音取り込み機能
評価
評価 | コメント | |
AirPods Pro | S | ノイズキャンセリングと並ぶ完成度の高さ |
ソニー「WF-1000X M3」 | A | 使えるには使えるが、AirPods Proには及ばず… |
結論
ノイズキャンセリングとともに注目を集める外音取り込み機能。イヤホンを付けたまま周囲の音を取り込める補聴器のような機能で、仕組みとしてはノイズキャンセリングの派生機能にあたる。
AirPods Proの外音取り込み機能は非常に完成度が高い。イヤホンを付けたままでも、ほぼほぼナチュラルに周囲の音が聞こえるので、一見(一聞)すると怖いくらいだ。
対してソニー「WF-1000X M3」の場合、どうしてもサーっと言ったホワイトノイズが入ってしまうので、外音とともに騒音も聞こえてしまう。この点、明らかにAirPods Proに劣るだろう。
3. オーディオ性能
評価
評価 | コメント | |
AirPods Pro | B | 従来AirPodsと変わらない普通のオーディオ |
ソニー「WF-1000X M3」 | S | ハイレゾ相当の音質(DSEE HX)で再生可能 |
結論
ソニー「WF-1000X M3」は、AirPods Proどころかワイヤレスイヤホン業界を1歩2歩抜きん出るオーディオ性能だ。ハードとしてのオーディオ・スペックはもちろん、ハイレゾ相当の音源(DSEE HX)に補正して再生できるので、完全ワイヤレスイヤホンとは思えない高音質を実現している。
対してAirPods Proはあまりオーディオ性能は良くない。というか、従来のAirPodsとさして変わりないレベルだ。全体的にフラットな音質だが、力不足感、ボソボソ感があるので、あまり聞いていて気持ちよくない。実用十分な音質と言ってしまえばそれで終わりだが、ソニー「WF-1000X M3」と比較すると明らかに下の下なのは否定できない。
4. 接続安定性
評価
評価 | コメント | |
AirPods Pro | S | ストレスをほぼほぼ感じない安定感 |
ソニー「WF-1000X M3」 | A- | 前作よりは改善、頑張ってる |
結論
双方ともに2019年発売のワイヤレスイヤホンとあってか、一昔前のワイヤレスイヤホンのような極端な接続の悪さ、音飛びや接続切れ、動画視聴時の音声延滞などは発生しない。
その上でAirPods Proは普段使っていて接続面でのストレスをほぼほぼ感じない。AirPodsシリーズならではの安定感はAirPods Proでも健在だ。
対してソニー「WF-1000X M3」は、一世代前のモデルである「WF-1000X」(2017)よりも接続安定性が改善されているものの、それでもAirPods Proに比べると劣るし、粗を探そうと思えば探せる。
5. ペアリング勝手
評価
評価 | コメント | |
AirPods Pro | S | OS関係なくストレスフリーに使える |
ソニー「WF-1000X M3」 | A | デバイス間の切り替えでミスることも |
結論
双方ともに複数デバイス間でペアリングをワンタッチで切り替えられる。何かしらのデバイスと再接続されている状態でも上書きでペアリングが切り替えられるので便利だ。
その上でAirPods Proは、iPhoneで使うにしてもAndroidで使うにしてもPCで使うにしてもストレスなくペアリングが切り替えられる。また、同一Apple IDでサインインしているAppleデバイス間であれば、再生ボタンだけで自動でペアリングが切り替わるので非常に便利だ。
ソニー「WF-1000X M3」も悪くはないのだが、強みとするNFCタッチやアプリ起動によるペアリング切り替えが時折失敗する。この点、AirPods Proのストレスフリーな使い勝手に比べるとマイナス点となる。
ここまでの評価をまとめると…
AirPods Pro | ソニー「WF-1000X M3」 | |
ノイズキャンセリング | S | S- |
外音取り込み機能 | S | A |
オーディオ性能 | B | S |
接続安定性 | S | A- |
ペアリング勝手 | S | A |
AirPod Proはオーディオとしては微妙だが、ガジェットしては他に類を見ない圧倒的な安定感がある。対してソニー「WF-1000X M3」はガジェットよりかはオーディオ製品である。オーディオ性能は評価すべきだが、ガジェットとしての安定感はAirPods Proよりも劣る。
そのほか細かな使い勝手を比較
日常ユースするとして気になるであろう点を比較していく。
装着感
評価
評価 | コメント | |
AirPods Pro | A | うどんが短くなってコンパクトに |
ソニー「WF-1000X M3」 | A | 少し大きくて重め、小型ヘッドセットのよう |
結論
どちらも無難なつけ心地。あとは好み次第だと思う。
AirPods Proの場合、前作AirPodsと異なり、うどんが短くなり、全体的にコンパクトにまとまっている。片耳約5gしかないので、長時間付けているとその存在を忘れてしまう出来だ。
ソニー「WF-1000X M3」は少しサイズが大きめ、重量重め(片方約8g)、存在主張が強め。耳に付けると違和感ないにしろ耳に付いてる感、引っ付いてる感はある。イメージとしては小型ヘッドセットのようだ。
タッチ操作性
評価
評価 | コメント | |
AirPods Pro | S | 感圧ボタンなので操作しやすい |
ソニー「WF-1000X M3」 | B | タッチセンサー仕様、反応の悪さあり |
結論
AirPods Proは、かつてのiPhoneのホームボタンと同じ感圧ボタン仕様なので、ボタンを押した感触が手に残る。それゆえ、ただのタッチセンサーよりも操作しやすく、ツータップ、スリータップ操作でも問題なく認識される。
対してソニー「WF-1000X M3」は古典的なタッチセンサー仕様とあってか反応は悪い。ツータップ、スリータップしてもワンタップとして処理されてしまうことが多々あるので、曲送り(ツータップ)でザッピングしてるときなどストレスに感じる。
マイク性能
評価
評価 | コメント | |
AirPods Pro | S | 安定したクオリティ |
ソニー「WF-1000X M3」 | B | ほぼ屋内用、屋外では辛い |
結論
AirPods Proのイヤホンマイクは屋内、屋外ともに問題なく使える安定したクオリティだ。
対してソニー「WF-1000X M3」は酷い。ノイズキャンセリングの集音用マイクがそのまま通話用マイクとなっているせいか、ほぼほぼ通話時のノイズ除去(騒音除去)が期待できない。屋内など静かな場所であればなんとかなるが、屋外など多少なりに騒音のある場所だと、騒音が多分に入るので使い物にならないと思う。
バッテリー持ち
評価
評価 | コメント | |
AirPods Pro | A- | ケース併用で24時間 |
ソニー「WF-1000X M3」 | A | ケース併用で32時間 |
結論
ソニー「WF-1000X M3」は、ノイズキャンセリングOFFの状態ならケース併用で公称32時間使えるので、ケース併用で公称24時間のAirPods Proよりも優れている。ただ、ノイズキャンセリングONだと公称24時間のバッテリー持ちなので、あまりAirPods Proと変わらなかったりするが…
充電環境
評価
評価 | コメント | |
AirPods Pro | A- | ライトニング端子での充電、Qi充電に対応 |
ソニー「WF-1000X M3」 | A | USB Type-C端子での充電に対応、Qi充電は非対応 |
結論
AirPods Proはライトニング端子での充電、およびワイヤレス充電(Qi充電)に対応。対してソニー「WF-1000XM3」はUSB Type-C端子での充電に対応、ワイヤレス充電(Qi充電)には対応しない。
昨今の充電環境から言えば、USB Type-C端子で充電できるソニー「WF-1000XM3」の方が利便性が高そうだ。ただ、普段からワイヤレス充電を活用している人、iPhone充電のためにライトニングケーブルを使っている人、こうした人であればAirPods Proの方が便利かも知れない。
防水
評価
評価 | コメント | |
AirPods Pro | A | IPX4の防水仕様、雨の日や運動中でも問題なし |
ソニー「WF-1000X M3」 | C | まさかの防水非対応 |
結論
昨今では安物ワイヤレスイヤホンでも防水(防滴)が一般的となったが、ソニー「WF-1000X M3」は防水非対応。雨の日の屋外使用や運動中など汗だく使用には不安が残る。AirPods ProはIPX4の防水仕様なので水回りでも問題ない。
使い勝手の評価をまとめると…
AirPods Pro | ソニー「WF-1000X M3」 | |
装着感 | A | A |
タッチ操作性 | S | B |
マイク性能 | S | B |
バッテリー持ち | A- | A |
充電環境 | A- | A |
防水 | A | C(非対応) |
これらのガジェット的な要素については、やはりAirPods Proは強い。普段使いするにあたって、ストレスらしいストレスを感じない安定感がある。
対してソニー「WF-1000X M3」は、使い勝手の面でストレスを感じないというと嘘になる。ところどころ「あれ?」と思うことはあるのでAirPods Proよりも安定感に欠ける。それでも、それでも頑張ってはいるのだが、いかんせんAirPods Proと比べると分が悪いかと。
この記事のまとめ
これまでの評価をまとめると以下のようになる。
AirPods Pro | ソニー「WF-1000X M3」 | |
ノイズキャンセリング | S | S- |
外音取り込み機能 | S | A |
オーディオ性能 | B | S |
接続安定性 | S | A- |
ペアリング勝手 | S | A |
AirPods Pro | ソニー「WF-1000XM3」 | |
装着感 | A | A |
タッチ操作性 | S | B |
マイク性能 | S | B |
バッテリー持ち | A- | A |
充電環境 | A- | A |
防水 | A | C(非対応) |
AirPods Proの特徴は、
- 業界随一のノイズキャンセリング性能
- ほぼほぼストレスフリーな使い勝手
- オーディオ性能(音質)は良くない
ソニー「WF-1000X M3」の特徴は、
- オーディオ性能は圧倒的
- ノイズキャンセリングは高評価もAirPods Proに劣る
- 普段の使い勝手ではAirPods Proに劣る
これらの見解を踏まえ、以下2点が製品を選ぶ際の重要ポイントとして挙げられる。
-
オーディオ性能(音質)にそこまでこだわりなく、ワイヤレスイヤホンをストレスフリーに使いたいのならAirPods Pro
-
多少の不出来は我慢した上で、オーディオ性能にとことんこだわりたいのならソニー「WF-1000X M3」
先々のレビューとおり、AirPods Proはガジェットであり、ソニー「WF-1000X M3」はオーディオと言える。
ワイヤレスイヤホンに何を求めるのか、ガジェットとしての安定感が欲しいのか、オーディオとしてのクオリティが欲しいのか。これを踏まえた上で、ガジェットとしてのワイヤレスイヤホンならAirPods Proを、オーディオとしてのワイヤレスイヤホンならソニー「WF-1000X M3」をおすすめしたい。
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